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まちづくりキーパーソン vol.04

平成26年3月の定期公演は、
秋常山古墳が題材の歴史ロマン「あきつね」

タント演劇学校 代表世話人 能美市郷土芸能保存会 会長 國分谷彦さん Kokubun Tanihiko 能美市根上町在住
■1 郷土芸能の宝庫・東北で育つ

 私の生まれ故郷は東北の山形。「花笠音頭」の発祥地といわれる尾花沢市(おばなざわし)です。近くには「おしん」の舞台になった最上川(もがみがわ)が流れ、その川を伝ってさまざまな文化が運ばれて来ました。最上川のお陰で「ひと・もの・文化」が交流し、私たちの暮らしに豊かな恩恵を与えてくれました。
 私が住んでいたのは100軒程の集落で、村芝居が継承されていました。東北は民謡や踊りの宝庫といわれますが、私の故郷でも盛んで、旅芸人もよく興行に来ていました。三味線、踊り、狂言。郷土芸能というものが特別なものではなく、普段の生活の中に溶け込んでいました。
 中学の頃は半年間、寄宿舎で生活していましたが、高校になると親戚の家に下宿することになりました。そこでも親戚のおばあちゃんが、「あんた、心の貧しい人間にならないようにしなさいよ。せめて、お茶とお花でも嗜(たしな)みなさい」と言って教えてくれました。
 この地は優れた人材を多く輩出しています。例えば、かまぼこの「紀文」の創業者も同郷です。劇作家の井上ひさしさんもいます。文化が育まれて受け継がれ、その文化を識(し)ることによって、人が育っていく。幼い頃から、そんなことを目の当たりにしてきましたので、「生きるうえで文化は大切なものだ」という信念を今でも持ち続けています。

個性派が揃う!タント演劇学校のメンバー

個性派が揃う!タント演劇学校のメンバー。

■2 能美の郷土芸能を次代へつなげる――能美市郷土芸能保存会

 15年前、地域の公民館長になったことから、郷土芸能に興味のある公民館や団体が発起人となり、郷土芸能保存会を立ち上げました。最初は5団体から出発。太鼓演奏、獅子舞演舞、民謡(舞踊)なども加わって、今では15団体が所属しています。
 能美市には「福岡じょんがら」「粟生(あお)じょんから」など、踊りだけでも集落独特のものがいくつも残っています。北陸は蓮如さんの影響で浄土真宗が深く浸透した地。これらはもともと室町時代後半に作られた念仏踊りといえます。念仏踊りは仏様への感謝、先祖への感謝を表わしたものです。盆の送り迎えや「ほんこさん(浄土真宗の報恩講)」の後に踊ったのが始まりとされています。
 近年、江戸時代から続く寺井地区・大長野の「九谷地づき音頭」を再興するお手伝いをさせていただきました。昨年(平成25年)に「大長野地づき音頭保存会」として能美市郷土芸能保存会に入会していただき、発表会では35名のメンバーにより披露されました。「地づき音頭」は唄と踊りによる土間打ちの作業歌です。唄い手と踊り手が一つになって成立します。土地に伝わるこれらの芸能からは、土地特有の仕事内容、日々の暮らし、先人たちの思いを感じ取ることができます。
 私の夢の一つは、こういった能美市の郷土芸能を掘り起こすことです。スポットをあて、時代にあわせて演出しながら、次代へつなげるお手伝いができればと考えています。


■3 観客一人ひとりに思いを届けたい――タント演劇学校

 タント演劇学校は平成10年8月に開校しました。石川県では能登演劇堂(能登)、金沢市民芸術村(金沢)、能美市根上総合文化会館タント(加賀)の三つのエリアに拠点を設けて、芸術文化活動を推進しています。タントもその一つです。
 現在、劇団員は15~16名。20歳代から30歳代が多く、70歳代まで所属しています。高校生もいますし、過去には俳優や声優をめざしている人、弁論大会優勝や吉本興業に入るためにタント演劇学校に入った人もいます。毎年春に募集していますが、興味があればいつでも入れます。教育機関とも連携しているので、小学生や中学生も時々加わって賑やかです。
 活動分野は演劇、朗読劇などで、市内外で公演しています。定期公演は年1回。オリジナル作品はこれまで3本上演しました。「天河の流れ」は、七ヶ用水の整備に尽力した枝 権兵衛(えだ ごんべえ)の物語。「やさしい月」は社会問題をテーマしたもので、世の中に膨大な情報があふれる結果、20年後の能美市はどうなっているか、子どもや大人やお年寄りはどうなっているかという作品です。そして、平成25年上演の「セットアップ」では、おじいさんは九谷焼の有名作家、父は居酒屋、息子は芸人をめざして東京へ飛び出していったという家族が登場。ある年の「九谷茶碗まつり」に息子がふらりと帰ってきて、おじいさんの陶芸家としての生きざまを知り、いろんな生き方や人生があることを理解し始めます。一人の若者が成長していく過程を描いたコメディです。

福岡じょんがら保存会。小さな子どもから70歳代までが盆踊りに参加する。
福岡じょんがら保存会。小さな子どもから70歳代までが盆踊りに参加する。

福岡じょんがら保存会。小さな子どもから70歳代までが盆踊りに参加する。


中庄虫送り太鼓保存会。太鼓、笛、鐘、竹が鳴り響く中、豊作を祈願し、田んぼの虫を追い払う。

中庄虫送り太鼓保存会。太鼓、笛、鐘、竹が鳴り響く中、豊作を祈願し、田んぼの虫を追い払う。

■4 表現者として磨きをかけたい

 どの作品も、演者同士で相手との台詞のキャッチボールをしながら演じなければなりません。コメディは特に難しいですね。同じコント、コンビでも違う。また、顔は泣いているけれども、体が泣いていない。口で言った表現でなく、観客の心にきちんと届けることが表現者として最も大切なことです。届けることが感動につながるのです。
 私はこれまでいろいろな役や人生を演じてきました。山奥の仙人。親父さんの中でも苦労人の親父、戦時中の特攻隊員の父親、交通事故で息子を亡くす父親など。いつも心配なのは、「自分たちの言葉や思いが観客の皆さんの心に届いているか」ということです。ちゃんと表現できているか、一人ひとりの観客と「心のキャッチボール」ができているかなのです。
 受け取る側、つまり観客も実に百人百様です。それぞれの暮らしや育った環境、考え方、積み重ねてきた経験によってとらえ方が違います。劇団員には折を見て、間のとり方を落語で勉強したり、表現力を日本舞踊や歌舞伎から学び、日々切磋琢磨しながら努力することの大切さを話しています。

■5 子どもたちに文化を伝えていくために

 私は長年、日本舞踊や民謡を習っています。所属する舞踊集団「菊の会」では長唄・小唄・地謡を学んでいます。職業と人々の生活をリアルに表現するために所作を徹底的に研究します。また、何を踊っているかがわかり、観客の心に届くようにするには、自然体で表現しなければなりません。そのため今は蝙蝠(こうもり)や七福神の踊りを修業中です。
 踊りは自然体表現と眼力が勝負です。演劇も表現力、滑舌(かつぜつ)など、後ろの座席の観客にも届くように気を配らなければなりません。忙しい中に来てくださって観客の皆さんに「観に来てよかった」と言ってもらえるように心を込めて演じなければならないと思うのです。
 これらの稽古は、自分や劇団員が演者として磨きをかけるためですが、同時に、子どもたちに対する指導力を高めるためにも取り組んでいます。地域の子どもたちが故郷の芸能や文化を覚えるためには、正確に教える技術の修得が重要だと考えています。
 能美市立浜小学校の新川淑恵校長は当劇団の卒業生ですが、毎年一緒にキッズクルーのお世話をしています。子どもたち20人くらいに演劇指導し、その成果を学校の文化祭で発表しています。
 まずは心が豊かにならないと文化人は育たないと思います。言葉や表現力のほかに、相手のことを理解する気持ち、思いやり、周囲への感謝、礼儀作法、日常のマナーなど、道徳をしっかり身に付け、心の中が潤わないと文化を深く理解することはできません。特に子どもたちには感謝の心を大切にしてほしいと願っています。

「わがマチ」のリメイク作品を演じた福岡小学校の子どもたち。タント演劇学校では小学生を対象にしたタント演劇講座を開催している。

「わがマチ」のリメイク作品を演じた福岡小学校の子どもたち。タント演劇学校では小学生を対象にしたタント演劇講座を開催している。

■6 3月の定期公演は「秋常山古墳」が題材

 定期公演が迫っている今(平成26年2月)は稽古も大詰めです。普段は週1回ですが、今は週2回。公演には総勢25名の劇団員が出演します。
 今年の作品「あきつね」は寺井地区にある秋常山(あきつねやま)古墳が舞台です。時代は紀元4世紀頃、約1600年前のお話です。脚本は金沢市民芸術村の池田むかうさん、演出は市川幸子さんにお願いしました。
 秋常一族は大和朝廷の流れをくむ北陸最大の国造(くにのみやっこ)。この地にやって来た時に、白山の湧き水や、能美の豊かな野、山、川、海の幸が気に入って住み着いたのだと私は思っています。
 秋常一族は平和を望み、智恵で時代を生き抜きました。白彦(しらひこ)王が周囲の有力者とうまく交渉しながら生き残りをかけるところは、大河ドラマ「軍師 官兵衛」にも通じるところがあります。作品では、一族の巫女の生き方と、秋常に来た大和朝廷の天皇の息子が土地の娘と結ばれるラブロマンスを中心に描いています。
 劇中で私は新羅(しらぎ)から舟でやって来る使者を演じます。土産を持ってやって来ます。これは記録にも残っています。すでに「文化・人・情報」で国際交流をしていたんですね。役作りで、その時代をイメージするため、記録をもとに時代背景を調べました。どうやって生活していたのか、一族をどう守って引っ張っていたのかなど。また、古墳の東は男性の墓、西は女性の墓となっており、装飾品や刀剣が出土されています。これらから、当時の人はとてもお洒落で情緒豊かだったことがうかがえます。出土品を眺めていると、当時の儀式の風景や楽器の音色が浮かんでくるようです。劇中では私たちが遥か昔に思いをはせながら作った衣装もお楽しみいただけます。
 作品の見どころの一つは、濃密な関係の中で育まれていく人間的な成長です。智恵を絞って、国の人を守り、国を豊かにし、未来へつないでいくことの大切さ。そのためにどんな力を蓄えていったのか。かつて能美の地で懸命に生きた秋常一族の生きざまを感じ取っていただければと思っています。

タント演劇学校 第15回公演「あきつね」
タント演劇学校 第15回公演「あきつね」
 池田むかう 作、市川幸子 演出
○開催日時:平成26年3月15日(土)19:00開演
平成26年3月16日(日)14:00開演
○会場:能美市根上総合文化会館 音楽ホール「タント」(能美市大成町ヌ118番地/JR寺井駅から徒歩7分)
○チケット:全席自由/一般1,000円、高校生以下500円