この地域に伝わる「押しずし」を
手作りで未来につないでいく


「ほのかグループ」を立ち上げて10年目に入りました。地元に残った同級生がメンバーで、グループ名も設立年に生まれたお孫さんの名前を拝借しました。その後、メンバーに多少の出入りはありましたが、現在6名、似通った年齢、環境の人ばかりです。私たちは市内の「ふれあい青空市」で販売する他に、一年を通して地域のスーパーや産地直売所へ卸したり、一般の家庭の皆さんから注文を受けて押しずしを作っています。注文をいただく時には、その家が代々使ってきた「すし桶」を預かります。それにおすしを仕込んで納品して、押しが効いた頃に食べてもらっています。特に秋祭りの頃は注文が多いですね。自分たちの家の稲刈り時期とも重なるので大変です。田んぼの他にも家事や介護や孫守りもありますので、皆で時間を融通し合いながら、なんとか繁忙期を乗り切っています。 押しずしの作り方や味付けは、育った家やお嫁に来た家で覚えたものが基本になっています。今では少なくなりましたが、以前は押しずし作りは家族総出の作業でした。お祭りの頃の恒例イベントだったのです。まず、おばあちゃんがすし飯をおにぎりにして、孫たちが笹を並べて具をのせて、おかあさんが笹に包んでいきます。最後はおとうさんがすし桶に並べていって、ふたをしてぐっと力を入れて押します。家族の中でそれぞれ役割が決まっていたのですね。のせる具も家庭や地域によっていろいろです。鮭の押しずしは上に干しえびや紺のりをのせたり、うす揚げの押しずしにはゴマをのせたりと、身内だけが中の具がわかる目印にしたものです。 |
![]() 「JAISTフェスティバル(北陸先端科学技術大学院大学)」 ![]() 知恵と経験が活きている押しずし作り。 |
すし飯に使うお米はメンバーの家で収穫された能美産です。秋祭りからは新米で作ります。格別の美味しさです。土地の恵みを神仏に感謝し、押しずしにしていただくことは、とても幸せなことですね。この自家米が年中美味しいすし飯になるように特に水加減に注意しています。また、すし作りでは、お子さんやお年寄りの方にも安心して食べていただけるように、おにぎりは他のおすしより少し小さめで、やさしい酸味に仕上げてあります。「ほのか寿司」には鮭を使います。トッピングは干しえびと紺のりで、えびは頭の付いたものを「お頭付き」とこだわっています。「あぶらあげ寿司」はうす揚げを「ほのかグループ」のこだわりの味付けにして、干しえびとゴマをのせます。その他、「みょうがの押しずし」もあります。今年の留学生交流イベント「JAPAN TENT(ジャパンテント)」で、能美市役所から接待を任されたため、魚肉類を食べられない留学生の方のために考案した苦心の一品です。みょうがをきれいに洗って熱湯で茹で、ざるに取り水気を拭いてからすし酢に漬けます。2、3日すると薄いピンク色になるので、すしにのせると香りと歯ざわりのよい押しずしができます。今ではファンも増え、大変喜ばれています。 押しずしの笹は自分たちで近くの山へ入って採ります。若い笹は押しずしに向かないので、7月中頃から9月頃までに採って冷凍保存します。 このように押しずしは手間のかかるものなので、昔のように家庭で作る人が少なくなり、そのうえ核家族化のために伝承することも難しくなってきています。「加賀おしずし研究会」では講習会を開いたり、イベントなどで販売して、押しずしを身近に味わってもらいながら、この地域だけに伝わる押しずしを見直してほしいと願っています。 |
![]() ![]() 綺麗に並んだ押しずし。 ![]() 木戸さんのすごい技!やさしくぐっと力を入れます。 |